明朝体らしいデザイン性と判別性、視認性、可読性で評価した おすすめは?
■ゴシック体は機能的なんだが
以前 Windowsなどで標準的に入るフォントから ビジネス文書向きの おすすめを紹介した。
その時はモダンで機能的なゴシック体から選んだが、そればかりだと 代わり映えしない という印象を持たれるかもしれない。
そこで 今回は 明朝体の おすすめフォントを選んでみた。評価項目は ゴシック体と同様の判別性、視認性、可読性に追加して 明朝体らしいデザイン性も加味した。
■おすすめフォント
①汎用的に使うなら
あれこれフォントを使い分けせず 1つ選ぶならば「BIZ UDP 明朝」。このフォントは UD (Universal Design ユニバーサル デザイン)なので判別性が素晴らしい。 一方 線の太さのメリハリや装飾(線の角に付くウロコなど)は控えめで あまり明朝体らしくない。
ビジネス文書では、読み間違いを防ぐ判別性が特に重要、デザイン性は二の次と考えて この選択。
線の細い(ウェイトの小さい)書体がないため 可読性も優れている とは言えないが 字のサイズ、字間/行間の すき間の調整によって ある程度カバーできる。
視認性のため線を太くしたい場合は 太字(ボールド)の書体をGoogle Fontsなどからダウンロードすると 良い。
②Wordなら
Word文書は長文が多いため、文字が並んだときの可読性が重要。
可読性が優先ならば 「游明朝」。字が たくさん並んでも窮屈に見えない。
ただし 明朝体らしく横線は細いため 視認性や判別性の観点で字のサイズを あまり小さくしない方が良い。
③Excelなら
Excel文書は表やグラフが多いため、英数字などの判別性が重要。
判別性が優先ならば 「BIZ UDP 明朝」または「BIZ UD 明朝」。字のサイズを小さめにしても判別性と視認性は割と良い。
④PowerPintなら
PowerPoint文書はプレゼンテーションのスライドが多いため、言葉をキレイに目立たせるデザイン性と視認性が重要。
デザイン性と視認性が優先ならば「HGP 明朝」。線のメリハリや装飾が明確で明朝体らしい。線の太い(ウェイトの大きい)書体も選べるので 視認性も素晴らしい。
⑤手書きっぽい方が良いなら
明朝体は活字ぽい字形なの堅苦しいと思われる場合もあるかもしれない。
もっと手書きのような字が良ければ おすすめは「UD デジタル教科書体」。太めの線なので視認性は優れている。判別性と可読性は 線が太い割に そこそこ良い。
■候補にしたフォントの個別評価
①BIZ UDP 明朝
・明朝らしい線のメリハリや装飾は小さめ→判別性○、明朝らしさ△
・字の中のスペース(フトコロ)は大きめ→判別性◎、視認性○
・線は普通、字の間の隙間は狭め→視認性○、可読性○
※ダウンロードすれば線の太い(ウェイトの大きい)書体あり
・評価まとめ: 明朝らしさ△、判別性◎、視認性○、可読性○
⇒判別性が重要なビジネス文書にはベスト
(デザイン性が重要なポスターやチラシなどには おすすめしない)
※Wordで長文などに使う際は、文字間隔と行間の広めに設定して字の間の すき間を広げると 可読性が良くなる。
※すき間を広げてスペースが気になる場合は 文字のサイズを小さめにすると良い。視認性が良いので少し小さめの字でも見やすいので。
※太字にしても線がそれほど太くならないので、文字を強調したい場合は、ゴシック体を使うか、Google Fonts からBIZ UDP明朝のフォント・データ(ボールド体を含む)をダウンロードしてボールド体「BIZ UDP Mincho」を使うと良い。
※もし英数字の字が大きすぎると思って 和文フォントと欧文フォントを組合せる(和欧混植)場合は 欧文フォント Cambria が おすすめ。線のメリハリなどがBIZ UDP 明朝に似ているため。
②游明朝
・明朝らしい線のメリハリや装飾は普通→判別性○、明朝らしさ○
・字の中のスペース(フトコロ)は普通→判別性○、視認性○
・線は細め、字の間の隙間は広め→視認性△、可読性◎
※線の太い(ウェイトの大きい)書体あり
・評価まとめ: 明朝らしさ○、判別性○、視認性△、可読性◎
⇒Wordなどの本文向き(ただし小さい字は視認性が良くない)
※視認性のため字のサイズを大きめにすると良い
③MS P 明朝
・明朝らしい線のメリハリや装飾は小さめ→判別性○、明朝らしさ△
・字の中のスペース(フトコロ)は小さめ→判別性△、視認性△
・線は細め、字の間の隙間は狭め→視認性△、可読性△
・評価まとめ: 明朝らしさ△、判別性△、視認性△、可読性△
⇒おすすめしない
④HGP 明朝
明朝らしい線のメリハリや装飾は大きめ→判別性△、明朝らしさ◎
字の中のスペース(フトコロ)は小さめ→判別性△、視認性△
線は太め、字の間の隙間は狭め→視認性○、可読性△
※線の太い(ウェイトの大きい)書体あり
評価まとめ: 明朝らしさ◎、判別性△、視認性◎、可読性△
⇒Powerpointの大きな見出し向き(小さい字は判読性が良くない)
※判別性のため 少し大きめの字のサイズにすると良い
※可読性のため 字間と行間を広めにすると良い
⑤HGP 教科書体
・明朝らしい線のメリハリや装飾は小さい→判別性○、明朝らしさ△
・字の中のスペース(フトコロ)は小さめ→判別性△、視認性△
・線は特に細い、字の間の隙間は普通→視認性×、可読性△
・評価まとめ: 明朝らしさ△、判別性△、視認性×、可読性△
⇒おすすめしない
⑥UD デジタル教科書体
・明朝らしい線のメリハリや装飾は特に小さい→判別性○、明朝らしさ×
・字の中のスペース(フトコロ)は普通→判別性○、視認性○
・線は太い、字の間の隙間は普通→視認性◎、可読性○
※線の太い(ウェイトの大きい)書体あり
・評価まとめ: 明朝らしさ×、判別性○、視認性◎、可読性○
⇒明朝体ではなく手書きっぽいデザインが良ければ おすすめ
※行書体、楷書体などは字形が独特のため判別性の観点で候補に入れなかった。
■まとめ
明朝体フォントを評価した結果、判別性、視認性、可読性、デザイン性の すべてに優れたフォントはなかったが、優先度を考えて、字のサイズや字間/行間を調整すればカバーできる。
自分がビジネス文書に使う場合は 判別性の良い「BIZ UDP 明朝」。 ビジネス文書に個人的意見を入れる場合やプライベート文書の場合は 手書きっぽい「UD デジタル教科書体」。
BIZ UDP 明朝には 現在のレギュラー(Medium)、ボールドに加えてライト書体の追加を期待している。もしライトが あれば 可読性が良くなって もっと万能になるのに。
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